緑内障AI診断支援システムの臨床研究について

当院では、緑内障AIの臨床研究を行っています。眼科AIの経験を活かし、AIの分野で緑内障治療に貢献できればと考え、本モデルを開発しました。
視野欠損を正確に把握することは、治療において非常に重要です。視野欠損を過小評価すると治療の遅れにつながり、逆に過大評価すると不必要な治療が行われる可能性があります。しかし、視野を正確に把握するために頻繁に視野検査を行うと、患者および医療関係者双方にとって負担が大きくなります。
当院には多くの緑内障患者が来院されますが、不幸にも進行を止められないケースも存在します。より良い緑内障診療を目指し、私の得意分野であるAIを用いたモデル(Pythonのプログラム)を開発することにしました。
最終的な目標は、視野をより正確に推測できるモデルを作り、多くの医院で使用され、失明のリスクを減らすことです。第一歩として、OCT画像から視野を推測するモデルを作成し、改良を重ねて精度を向上させました。現在では人の推測よりも正確で、ノイズに強く、高い精度の視野推測モデルが完成しています。院内で臨床運用しており、診療に役立っています。ソースコードの公開は、後の問題を避けるため控えております。詳細は (Jxiv)および、 (medRxiv)に公開しており、査読付き論文として投稿中です。
モデルの改良は日々続けており、数学の勉強や新しい手法の導入も行っています。私はもともとコンピュータが好きで、PythonのPyTorchでモデルを編集している時間が最も楽しく、没頭してしまいます。そんな私を支える家族には感謝しかありません。AIの分野は日々進歩しており、常に新しい情報を追い求め、より良いモデル作りを心がけています。
この研究の費用は全て自費です。処理が重いため、高速なグラフィックカード(GPU)が必要です。私は各パーツを選定し、自分で組み立てることでコストを抑え、信頼性も高めています。
データはすべて医院内の安全な場所に保管し、個人情報を特定できる要素は全て削除しています。遠隔操作の際も、OpenVPNを使用して安全を確保しています。余計なポートやサービスは全て無効化し、セキュリティに最大限の注意を払っています。尚、キーボードは分離式を使用しています。
より正確な推測には多くの学習データが必要です。現在のAIはOCT機種や測定条件が異なると精度が低下します。同一機種・同一条件のデータが多いほど、推測精度は向上します。
精度が高まれば、早期に進行の早い患者を発見し、積極的に治療を行うことで、緑内障による失明を減らせると考えています。将来的には、多施設共同研究を通じて推測の精度を高め、一般の医院でも使用されるモデルを作りたいと考えています。現在、筑波大学、島根大学、自治医科大学を主幹とした多施設共同研究に参加し、失明率の低下を目指して研究を続けています。多くの関係者のご協力に感謝しております。DeepEyeVision株式会社とも共同研究を行っています。
ご協力いただける方は、minamikoyasuganka@gmail.com までご連絡ください。


日本眼科AI学会の眼科AIコンテスト

お陰様で、前回2021年眼科AIコンテスト優勝に続き、2024年眼科AIコンテストでは準優勝することができました。 コンテストの手法解説は こちらのスライド になります。学会発表時の内容に加えて、時間の関係で発表できなかった補足事項も含まれております。もし疑問点などございましたらご指摘をお願い致します。
前回の2021年眼科AIコンテストの手法解説は、 こちらのスライド説明データになります。
2024年12月  南子安眼科 古山 誠(こやま まこと)